

2人のコーディネーターが、
それぞれに、
KAIEの作品を展示する試み。
今回の展示は、キュレーターを目指すお二人
(斎藤照子さん)(穴澤秀隆さん)が、
それぞれにKAIEの作品を選んで、
違う目線で展示をしていただきました。
斎藤さんは、KAIEのリメイク作品がある空間に興味を持ち、
穴沢さんは、リメイクした洋服にメッセージを感じ、
サスティナブルファッションの視点で
展示をしていただきました。
展示方法については、
私は一切口を出さずに、お任せ致しました。
なぜなら、
私の作品に興味を持っていただいたお二人が、
私にできない見せ方で、
作品を展示してくれると信じていたからです。
斎藤さん、穴澤さん、素晴らしい展示を
本当にありがとうございました。
KAIE
2016年6月15日
2016/6/13-6/20
BankART AIR 2016特別展
穴澤さんのブログより
6/16 10:00
KAIEに
あるいは、辺境の神謡
地中海のうなぞこ深く眠っていたニケは、
鋼鉄のワイヤーにより引き上げられた。
久高島のノロは娘盛りの自分を回想し、
潮風の中に固い乳房を晒す。
ポピ族、ズニ族、アコマ族の祖霊は、
ホルスト・アンテスが交霊したカチーナのかたちとして甦る。
梟の神を戴いたアイヌの子らは、
笑いながら私に銀色の矢を射かけてくる。
そうだよ、このとき、
辺境の民草が、手を携えて地平線から姿を顕わす。
そしてKAIEは、まっすぐに立って、
人々を迎え、広い胸に抱くに違いない。
私たちの同報、子どもたち。
この場に集う者たちに
KAIEは語であろう。
「希望はある」
「世界は更新される」
「私たちは、生きている」と。
6/14 21:00
「BankART AIR 2016 特別展」は、13日にオープニングした。
これがKAIEさんの作品を展示した私のディスプレー。
自慢めいてしまうが、
チョーかっこいい展示、でしょ。
でも、私はどこかの知事とは違うので、
事実を正直に告白します。
じつは、この設営に際しては、
アートスペース「nitehi works」を主宰されている
稲吉稔さんの多大なるご指導、ご助力によりました。
いや、ハッキリ言うと、
ぼくは後方にいて、「いいね、いいね」とか言ってるだけで、
宙づりの高所作業とライティングのほとんどは、
イナヨシさんにしていただきました。
ここに満腔の思いを込めて、深甚なる御礼を申し上げます。
でもさ、ともかく、
スゴイ展示ができちゃった。
この出来事を通じてつくづく感じるのは、
見せ方ということの重要さ。
これは単に美術展の展示に限らない。
私たちの視覚に飛び込んでくるほとんどの事物は、
「見せ方」というバイヤスが掛かっている。
夜はオープニングパーティがあった。
みなさんもきっとそうだと思うが、
パーティとかレセプションというのは、
社交辞令や情報交換の場であって、
それを本当に楽しめることは少ない。
でもね、昨日の夜はそうではなかった。
こんな夜のために、
ぼくらはだれた日常を生きているのかと思うほどに、
それはそれは愉快なパーティだった。
そうだな、パーティの様子を映像化するなら、
こんなエンディングが考えられる。
パーティ会場を写していたキャメラがすうーっと引くと、
BankARTを上空からのドローン撮影映像に変わる。
ドローンは夜の港の上空をついーっと滑って行って、
反転して、港の夜景を映し出す。
そこでは最早BankART Studioは、
さんざめく光の粒に囲まれた暗闇に過ぎず、
このパーティが、都会の一角の、
ほんのちっぽけな出来事に過ぎないことを
そして同時に、
それが、たしかに「世界」との回路を繋ぐ物語であることを暗示している。
そんな夢みたいな、BankARTの夜だった。
6/12 22:16
死体を車で運んだことのある人はいますか?
「BankART AIR 2016 特別展」のKAIEさんのファッションをどう展示するか。
明日のオープニングを前に悩みに悩んでいた。
そんな折り、馬車道のブテック『モードサロン ビネス』が閉店することを知った。
マダムに聞いたところでは、
太田町ビルが老朽化のため取り壊されることになり、
戦前から続けてきた店を閉めることになったとのこと。
ついては、店で使っていたマネキンの処分に困っているので、
私にくれるというのだ。
願ってもいないとは、このことだ。
ところで、
皆さんの中に、死体を車で運んだ経験のある人はいますか?
いたなら、手を挙げて。
まさかね。
しかも、スタイル抜群の、裸の女性を三人まとめて、
ラゲージルームに入れたことがある人なんて、いないに決まってる。
馬車道からBankARTは目と鼻の先だが、
その間、私は隣の車から覗かれているような気がしてならなかった。
ま、そんなわけでさ、
ぼくは有り難く3体のマネキンを頂戴し、BankARTに持ち込んだというわけよ。
さてさて、こいつをどう使わせてもらおうかな。
展覧会は、いよいよ明日からだ。
6/12 1:08
ファッションという難問
「BankART AIR 2016 特別展」は、13日がオープニングだ。
まったく余裕がない。あせる。
昨日は、展示をするつもりでBankARTに行ったのだが、
展示場所が変更になり、そこでイベントがあったために、
作業を行うことが出来なかった。
今日は予定が入っているので、
展示はオープニングの当日にやるしかない。
でも、BankARTでは、こういう泥縄状況は、珍しくないようで、
誰も慌てていない、あるいは表面的にそう見える。
KAIEさんは、じつに多様性のある作家だが、
私が注目しているのは、そのファッションであることは、前回書いた。
けれども、そう決めてしまってから、
私自身がファッションについて、
まともに考えたことがないことに気づいた。
ファッションが私たちの身体に関わることは、誰だってわかっているさ。
〈身体〉は私たちそのものだとも言える。
でも、私たちは、私たち自身である〈身体〉について見えていない。
医者という職業が社会的に尊敬されているのは、
人の命を扱う尊い仕事だから、ではなく、
私以上に私の〈身体〉を知っているという、
まさに知の特権性よるのだと、
ミシェル・フーコーが言っていたが、まさにそう。
その〈身体〉を覆っているファッションは、
さらに難解なテーマだと言える。
今回は、この難問に敢えて向き合うことを私は選んでしまった。
以下のような、素晴らしいKAIEさんの世界を、
私自身の言葉と感覚で捉え直し、提示してみたい。
6/7 17:58
KAIE=カイエさんの世界と私の意図
既報のとおり、6月13日〜20日の8日間、
「BankART AIR 2016 特別展」が、開催される。
50組のアーティストの中から、私が出品のお願いをしたのは、
KAIE=カイエ(吉沢香代子)さんという造形作家。
カイエさんは、「お古」「Reuse」をテーマに、
ファッションやオブジェの制作を幅広く手がけており、
そこには、沖縄久高島の祖霊信仰、
プエブロインディアンやモンゴルの遊牧民族などの
ノマド的世界への共感という、
スピリチュアルな要素が盛り込まれている。
そのカイエさんの制作活動の中で、
私が注目したのはファッションだ。
今日、私たちの身近には、UNIQLOやGAPなどの
ファストファッションと呼ばれるものがある。
それらは、安価で、品質がよく、
しかも、そこそこのファッションニーズを満たしている。
でも、この衣料品が、インドやカンボジアの労働者の
過酷な労働によって生産されている事実はあまり知られていない。
2013年4月にバングラデシュのダッカで、
老朽化した縫製工場が崩壊した事件を記憶している人はいるだろう。
この事故では、実に1,127人の人が死に、2,500人以上の労働者が負傷した。
この事故の背後にあったものは何か。
そうだよ、それこそが、グローバリズムというものだ。
ここには、需要があり、
ものが売れるにも関わらず貧困が助長されるという
不合理な状況がある。
どうして、そういうことが起こるのか。
ざっくり言えば、ほんの一握りのにんげんが富を独占しているせいだ。
そして、それを可能にしている構造として、
国際的分業のシステムがある。
カイエさんのファッションから、
このような問題に駆け上がりたいというのが、私の目論見だ。
人はそれを、牽強付会(こじつけ)と言うかも知れない。
でもね、アートが力を持ちうるのは、
このような想像力を克ち取ることができる
ほとんど唯一の方法だと私は思っている。
だけどさ、見る人の想像力を掻き立てるには、どうしよう。
「見せ方」を工夫する必要がある。
さてさて、どうしたものか…。
むろん、構想はあるもんね。
でも、それを発表するのは、次回。
乞う、ご期待。 (^^ゞ
BankART1929 の池田修代表を講師に、本年 5 月から開催された「BankART 義塾 part2」は、アーティストを支え、社会とつなぐギャラリーやオルタナティブスペース、フリーランスのコーディネーターを目指す人のための実践ゼミです。講義の内容は展覧会、プロジェクトの企画立案、ファ ンドレージング、具体的な運営業務、書籍の編集やデザイン、顧客の管理など多岐に渡り、全 8 回に渡る講義を通して場所を選ぶ力、展示レイアウ トする能力、広報する力等を学びました。今回、その集大成として本ゼミの参加者 23 名それぞれが、「BankART AIR 2016」(※)参加作家と作品 を自ら選び、企画したグループ展を開催いたします。BankART 義塾受講生の成果発表であると同時に、今年も多様な作家の参加で盛り上がった 「BankART AIR 2016」の作品の数々を改めて振り返ります。



















斎藤さんの「手作りKAIEの瓦版」
KAIEさんは幼少の頃の風景に、おばあさんの手仕事を見てきた。その後成長されて気づいた事は、捨てられる布の扱い方、
製作からまた新しい表情を見せてくれるのだ。と これは私の尊敬する世界でご活躍中の「川俣正氏」2005年横浜トリエンナーレ第2回展開催のディレクターであり、アーティストの扱う廃材を使って、まったく別の風景に変えてしまう技に似ていることを感じるので、KAIE作品に惹かれるのだと作品に触れることで、私自身気付きました。斎藤 (一部抜粋)






